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NIIDATE 新舘建設株式会社 Niidate & Co.

お知らせ News

2025/06/20
労働力不足における組織の取り組みと展望の検討について

日本の産業構造は近年急速に変化している。少子高齢化に伴う労働人口の減少、技術革新の加速、さらにCOVID-19以降の働き方改革など、企業を取り巻く環境は多様な課題を内包している。中でも中堅・中小建設業をはじめとする現場重視型の業界においては、技術人材の確保と育成、業務効率化、そして社員の働きがいの創出が喫緊の課題とされている。
本稿では、弊社の取り組みを事例として取り上げ、現状の課題認識から将来的なビジョン、それに対する改善策と今後の展望に至るまでを論じるとともに、それが学生にどのような示唆を与えるかについて考察する。これから社会に出ようとする学生にとって、企業の“中からの声”を知ることは、自身のキャリア形成の一助となる。

〜労働力不足と業務管理の課題〜
弊社では、近年現場における労働力不足が深刻化しており、熟練した技術者や作業員の確保が事業継続の根幹を揺るがすほどの喫緊の課題とされている。これは建設業界全体に共通する現象であり、特に地域密着型の企業にとっては、地元の人材流出や若年層の業界離れが、慢性的な人手不足に拍車をかけている。
このような状況に対し、全社員の賃金の大幅アップや福利厚生制度の充実を図ることで対応しているが、それだけでは十分とは言い難い。現場の管理体制そのものに柔軟性や効率性を欠いており、年間を通じて数名の退職者が発生していることも問題である。
一方で、業務の効率化を目指し、DXを念頭に置いたシステム構築や設備導入の推進をおこなっている。だが、現場での導入には専門的な知識や教育が必要不可欠であり、技術的な理解や適用能力に皆無な現状では、実用段階に到達するまでに相応の時間を要すると思われる。
さらに、間接部門である人事労務、経理、ITシステムにおいては、管理職の経験や専門性が皆無であるため、外部から経営コンサルタントを招聘し、経営指導者としての役割を担わせている点も注目すべき点である。これは弊社が「自己変革の意志を持っている」ことの表れでもあるが、逆に言えば社内にまだ部下を指導するのに十分な人材がいない証左とも言える。

〜企業の将来ビジョン〜

こうした現状を受けて、弊社は中長期的なビジョンを明確に描いている。中でも注目すべきは、管理部門、現場部門、不動産部門それぞれの強化を図り、さらには分社化という大胆な構想を掲げていることである。

具体的には、以下のような4部門による特化と統合の両立を目指している。

  1. 土木部門:道路や上下水道の整備、橋梁補修といった基盤整備を担う。
  2. 電力部門:電気設備の保守・メンテナンスおよび電線敷設など、インフラの安全と安定供給を守る。
  3. 環境部門:汚染土壌の改良工事や法令に基づく環境対策を実施。
  4. 不動産部門:7棟の自社マンションを活用した賃貸管理、売買仲介等の不動産事業。

これらの業務はそれぞれに専門性が高く、従来のように一括で運営するには限界がある。そのため、分社化によって組織ごとに独立した事業構造を持たせ、意思決定や運用にスピード感を持たせるという狙いがある。

学生にとって、この戦略は企業のしなやかさを象徴するものとして注目されるべきである。規模の大小にかかわらず、変化に柔軟に対応しようとする企業こそが、これからの日本経済を支える存在となっていくべきである。

〜組織風土の改善と若手育成〜

企業の成長には、外部要因だけでなく社内の組織文化の変革が必要である。弊社では、特に若手人材の成長に焦点を当てた改革を進めている。

これまでの会議体制は、上層部が一方的に話すだけで若手社員が発言できない「黙って従う文化」が中心であった。しかし、現在では若手社員にも積極的に発言の機会を与え、業務改善提案などを通じて社内の意思決定に参加する仕組みが整えられてきている。

また、幹部育成のためにMBO(目標管理)やコーチングといった理論に基づいた研修プログラムを導入し、組織全体のリーダーシップ強化を図っていることも特筆に値する。さらに、報酬制度の見直しや有給取得の奨励、定時退社の実現に向けた業務効率化も進められており、社員にとって「持続可能な働き方」が目標とされている。

このような企業文化の変革は、学生にとっては大いに学ぶべき点がある。すなわち、「働きがい」と「生きがい」を両立させる職場とはどのようなものかを、自らの目で確かめる機会を持つべきである。

〜AIとDX時代における業務変革〜

今後の企業経営において、避けて通れないテーマが「AIの活用」と「DXの実現」である。弊社においても、社内業務のAI化による業務効率化と利益確保を目指した取り組みが始まっている。

AIは単なる自動化ツールとしての役割だけでなく、データに基づく意思決定の高度化や、人的リソースの最適配置などを可能にする。その一方で、AIを真に活用するためには、社員一人ひとりのリテラシーや技術理解が必要となる。単にAIを導入するだけでは成果にはつながらないのである。

学生が社会に出てからAIに関わる仕事をする可能性は今後ますます高まる。このため、AIやデータサイエンスへの理解を深めることは、理系・文系を問わず必要な素養となるだろう。

〜最期に〜

企業が直面する課題は複雑で、簡単に解決できるものではない。しかし、それらに真摯に向き合い、変革を図ろうとする意志こそが、未来を切り拓く鍵となる。常に課題を可視化し、改善を重ね、将来への構想を練る姿勢は、どの業界においても通用される。

幹部会議の様子