全国の交通事故件数は、昭和50年頃から増加の一途をたどり、平成16年頃にピークを迎えました。物損事故を除いた発生件数や負傷者数は著しく増加し、社会的にも大きな問題となりました。その後は減少傾向にあるものの、令和5年度の統計では依然として発生件数約30万7千件、負傷者数約36万5千件と、全国各地で事故が後を絶たない状況です。交通事故は依然として私たちの生活に深刻な影響を与え続けており、企業としても安全管理の徹底が求められています。
弊社においても、20年ほど前には年間30件から40件もの事故が発生していました。物損事故を含めると決して少ない数字ではなく、接触事故や巻き込み事故などが目立ちました。幸い死亡事故はありませんでしたが、原因の多くは人的要因に起因するものでした。わき見運転、携帯電話の使用、漫然運転、周囲の安全確認不足など、いずれも「注意を怠った瞬間」に起こるヒューマンエラーです。これらは誰にでも起こり得るものであり、だからこそ組織的な対策が不可欠でした。
そこで10年ほど前から、安全衛生委員会を中心に事故防止への取り組みを強化しました。まずは基本的な生活習慣の改善に着目し、十分な睡眠時間の確保や仕事上のストレス緩和を推進しました。心身の健康が保たれてこそ、集中力を維持し安全運転につながるという考え方です。さらに、繁忙期や年末など事故が増えやすい時期には特別な注意喚起を行い、事故原因の分析と対策を重点的に進めてきました。
加えて、5年ほど前からは「なぜなぜ分析」という問題解決手法を導入しました。事故が発生した際に「なぜ」を繰り返し問い直すことで、表面的な原因ではなく根本的な要因を突き止めることができます。例えば「わき見運転」が原因とされる事故でも、なぜわき見をしたのか、なぜその状況で注意が逸れたのかを掘り下げることで、再発防止につながる具体的な改善策を導き出せます。この手法を取り入れたことで、同じ過ちを繰り返さない仕組みが社内に定着しつつあります。
ヒューマンエラーは完全にゼロにはできません。しかし、重要なのは「同じエラーを繰り返さない」ことです。なぜなぜ分析を通じて社員一人ひとりが事故の背景を理解し、改善策を共有することで、組織全体の安全意識が高まりました。その成果は数字にも表れており、ここ3年間の年間事故件数は一桁台にまで減少しました。20年前には年間30件以上発生していたことを考えると、これは大きな進歩であり、社員の努力と組織的な取り組みの成果といえます。
もちろん、事故防止は一度成果が出たからといって終わりではありません。繁忙期や年末など、業務が集中する時期には依然として事故が増える傾向があります。だからこそ、今後も継続的な分析と改善が必要です。安全衛生委員会を中心に、社員一人ひとりが「安全は最優先」という意識を持ち続けることが重要です。
私たちは「事故件数ゼロ」を目標に掲げています。これは容易な目標ではありませんが、決して不可能ではありません。過去の取り組みで事故件数を大幅に減らすことができたように、今後も一層の努力を重ねることで、ゼロに近づけることは十分可能です。安全運転は社員一人ひとりの責任であり、同時に会社全体の文化でもあります。
交通事故は一瞬の油断から発生します。しかし、その一瞬を防ぐために、日々の習慣や意識を積み重ねることが何より大切です。睡眠、ストレス管理、周囲の安全確認、そして事故発生時の徹底した原因分析。これらを継続して実践することで、私たちは「安全な職場環境」を守り続けることができます。
今後も弊社は、社員の安全を最優先に考え、事故防止対策を強化してまいります。事故件数ゼロを目指す挑戦は続きますが、その過程で培われる安全意識こそが、会社の成長と社員の安心につながると確信しています。